原因:日本脳炎ウイルス
日本脳炎とは、日本脳炎ウイルスの感染によって起こる中枢神経の疾患です。
豚の中で繁殖した日本脳炎ウイルスがコガタアカイエカに媒介され、その蚊に刺されることによって感染します。
東アジア、南アジア、東南アジアにかけて広く分布する病気で、日本でもウイルスを持った蚊は毎年発生しており、引き続き国内でも感染の可能性はあるとされています。
日本において近年では10人以下の発生に減少しており、ワクチン接種が発症を有効に阻止できていると言えます。
感染者のうち100~1,000人に1人が7~10日の潜伏期間の後、高熱、頭痛、嘔吐、意識障害、けいれんなどの症状を示す急性脳炎になります。
脳炎の他、無菌性髄膜炎や、夏風邪様の症状で終わる方もいます。
脳炎にかかった時の死亡率は約17%(国内統計)で、神経系の後遺症を残す方が40~75%にのぼります。
特に小児は重い障害を残すことが多いと言われています。
1期 | 6ヶ月~7歳6ヶ月(3歳以降を推奨)の間に、3~4週間間隔で2回接種します 1年あけて追加を1回接種し、合計3回接種します |
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2期 | 9歳~13歳未満までに1回接種します |
以前、使用されていたマウスの脳成分から作られたワクチン接種後に、ADEM(亜急性散在性脳脊髄炎)の重症例が起こった(因果関係が否定できなかった)として、2005年5月よりワクチン接種の積極的推奨が控えられ、定期接種が行われなくなっていた時期がありました。
この古いタイプのワクチンは2010年より使用されなくなりました。
現在は、新しいタイプの日本脳炎ワクチンで行われ、2011年5月20日からは通常の接種の他、この見合わせられた時期に、本来受けるはずだった回数分を定期接種として下記のように受けられるようになりました。参考にして下さい。
過去にワクチン接種0回 | 1期3回、2期1回の計4回を接種する |
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1期で1回の接種済み | 1期分を2回、2期1回の計3回を接種する |
1期で2回の接種済み | 1期分を1回、2期1回の計2回を接種する |
原因:麻疹ウイルス、風疹ウイルス
麻疹(はしか)は、麻疹ウイルスの飛沫感染により生じます。非常に感染力が強く、生涯に一度は感染すると言われています。
主な症状は発熱、発疹、咳、鼻汁、眼脂で、3日前後の発熱の後、一旦治まりかけ、その後再び高熱となります。気管支炎や肺炎、脳炎、中耳炎が合併症としてあげられ、麻疹は現在の医療水準を持ってしても、死亡することもある怖い病気と考えられています。
風疹は、風疹ウイルスの飛沫感染により、2~3週間の潜伏期を経て発症します。
発熱、発疹、リンパ節腫脹が主な症状で、脳炎や血小板減少性紫斑病を時に合併します。
また、妊娠中に風疹に罹患してしまうと、生まれてくる子供に先天性風疹症候群(心臓奇形、白内障、聴力障害)を起こしてしまうことがあります。このため、女性は遅くても妊娠年齢までにワクチンを接種しておくことが重要となります。
ワクチンの接種回数は第1期は1歳で1回、第2期は小学校入学前の1年間に1回接種します。
原因:ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型(Hib)
乳幼児の細菌性髄膜炎の原因の50%以上を占めるのがHibです。
Hibはその他にも、急性喉頭蓋炎や、敗血症などの深刻な病気を引き起こします。
Hibワクチンの使用が認められていなかった頃、日本では年間600人以上の乳幼児が髄膜炎に罹患し、治療を受けても年間約30人が犠牲になり、年間約150人にてんかん、知能障害や聴力障害などの重い後遺症が残っていました。
Hib感染症は5歳未満の乳幼児、特に生後6ヶ月から2歳までに罹りやすいと言われています。
従ってHibワクチンは、生後2ヶ月になったら開始し、なるべく生後6ヶ月までに3回の接種を終わらせることが重要となります。
Hibワクチンの4回接種を終えた児では、ほぼ100%に抗体が獲得され、Hib感染症に対して高い予防効果が認められています。
初回接種時の月齢・年齢 | 接種回数 | 接種スケジュール |
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生後2ヶ月~6ヶ月 | 4回 | 1回目から3~8週間間隔で2回目を接種 |
2回目から3~8週間間隔で3回目を接種 | ||
3回目のおおむね1年後に4回目を接種 | ||
生後7ヶ月~11ヶ月 | 3回 | 1回目から3~8週間間隔で2回目を接種 |
2回目の1年後に3回目を接種 | ||
満1歳~4歳 | 1回 | 1回のみ |
5歳以上 | 接種不要 | 5歳以上ではヒブ感染症自体がほとんどないため不要とされています。 |
原因:肺炎球菌
肺炎球菌は小児の細菌感染症の2大原因のうちの1つです。
日本では毎年200人以上の乳幼児が肺炎球菌による髄膜炎に罹り、そのうち約30%に重い後遺症が残っています。
この他、肺炎、菌血症、難治性の副鼻腔炎や中耳炎、関節炎や骨髄炎などを引き起こします。
したがって、ヒブワクチンと同様に生後2ヶ月で開始して、肺炎球菌による髄膜炎の起こりやすい生後6ヶ月までに3回の接種を終えることが重要となります。
初回接種時の月齢・年齢 | 接種回数 | 接種スケジュール |
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生後2ヶ月~6ヶ月 | 4回 | 1回目から4週以上の間隔で2回目を接種 |
2回目から4週以上の間隔で3回目を接種 | ||
生後12~15ヶ月に4回目を接種 | ||
生後7ヶ月~11ヶ月 | 3回 | 1回目から4週以上の間隔で2回目を接種 |
2回目から60日以上の間隔をあけ、生後12~15ヶ月に3回目を接種 | ||
満1歳 | 2回 | 1回目から60日以上の間隔で2回目を接種 |
2~9歳 | 1回 | 1回のみ |
10歳以上 | 接種不要 | 10歳以上では罹患することがないため接種不要です |
原因:肺炎球菌
「肺炎」は、日本人の死亡原因の第4位の疾病です。
肺炎球菌は肺炎や慢性気道感染症、中耳炎、敗血症、髄膜炎などの原因になる菌です。
肺炎球菌感染症は、頻度が高く、しかも重症化しやすく65歳以上の方においては、肺炎の原因菌の第1位となっています。
さらに近年では、薬剤に耐性を示す菌が急増しており、治療が困難な方も増えています。
ワクチンによる予防は耐性菌にも有効で、本ワクチンの大きな利点のひとつです。
1回の接種で5年以上免疫が持続すると言われています。
再接種する場合は、前回から5年以上の間隔を空けて接種します。
原因:HPV(発がん性ヒトパピローマウイルス)
子宮頸がんは子宮の入り口(頸部)にできるがんで、日本では年間約2,000人が子宮頸がんで亡くなっていて、20代後半から40歳前後での発症が多くなっています。子宮頸がんのほとんどはヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が原因となって発症することが解明されています。
主な感染の原因は性交渉と言われており、性交渉のない時期にワクチンを接種することが効果的であると言われています。
ヒトパピローマウイルス(HPV)には100種類以上の型が存在しますが、全てががんの原因となるわけではありません。
現在使用されているワクチンは、子宮頸がんの原因の6、7割程度を占めているとされる、2種類の型に対して感染を予防する効果があります。
このため、予防接種だけで全ての子宮頸がんを防ぐことはできません。
しかし、子宮頸がんは定期的に検診を受けていれば、大部分をがんになる前の段階で発見して治療することができます。
ワクチンの種類 | 接種回数 | 接種スケジュール |
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サーバリックス | 3回 | 初回接種、初回接種から1ヶ月後、初回接種から6ヶ月後に接種 |
ガーダシル | 3回 | 初回接種、初回接種から2ヶ月後、初回接種から6ヶ月後に接種 |
※接種スケジュールの途中でワクチンの種類を変更することはできません
※どちらかのワクチンで3回の接種が完了した後、新たにもう一方を接種することはできません
原因:水痘ウイルス
水ぼうそうは水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の感染により発症します。
VZVは水痘を発症した後、三叉神経節などに潜伏して、本人の免疫状態により再活性化して、帯状疱疹を発症します。
症状は、発熱および発疹が顔、頭皮、体幹、四肢など全身に出現します。
発疹のピークは2~3日で、その後乾いて黒いかさぶたになり、5~7日程度で治癒します。
妊娠初期に水痘に罹患すると、赤ちゃんの皮膚、脳、手や足、眼などに障害が出ることがあります(先天性水痘症候群)。
妊娠12週までの感染の場合で、約3%に生じると言われます。
また、妊娠末期に母体が水痘に感染すると、VZVが胎盤を通して胎児に感染し、新生児水痘を発症します。母体から新生児にVZV抗体が移行していない場合、新生児は重症水痘になる可能性が高く、この場合、肺炎や脳炎を併発して死に至るケースも少なくありません。
このため、女性は遅くとも、妊娠年齢までには水痘ワクチンを接種しておくことが重要になります。
原因:ムンプスウイルス
おたふくかぜは、流行性耳下腺炎またはムンプスとも呼ばれ、代表的な小児期の急性ウイルス感染症です。
このウイルス感染症の30~40%程度は無症状(不顕性感染)に終わりますが、発症する場合には感染してから16~18日後に、主として耳下腺腫脹、顎下腺腫脹、食欲不振、頭痛、吐き気、発熱などの症状が現れます。
耳下腺と顎下腺の腫脹は、片側または両側に認められ、その持続は3~7日、長い時には10日にも及ぶことがあります。しかし、これらの症状ばかりでなく、このウイルスは全身の各臓器または組織を侵し、睾丸炎、卵巣炎、膵炎、腎炎などをおこす場合があります。
患者は3~5歳が最も多く、2~9歳が好発年齢となっていますが、比較的症状が重くなると言われる15歳以上でも2~3%の患者が報告されています。成人が罹患すると一般に症状が重く、耳下腺炎、無菌性髄膜炎、睾丸炎などの重症例がしばしば見られます。
原因:インフエンザウイルス
潜伏期間は通常1~2日間です。
症状は風邪とは異なり、比較的急速に出現する悪寒、発熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛を特徴とし、咽頭痛、鼻汁、鼻閉、咳痰などの気道炎症症状を伴います。腹痛、嘔吐、下痢といった胃腸症状を伴う場合もあります。合併症として肺炎と、インフルエンザ脳症があります。
インフルエンザワクチンは生後6ヶ月から接種できます。